静かな海老名の街並みに、
ひっそりと──
それでいて、穏やかでありながらも、
揺るぎない存在感を放ちながら佇む一つのお寺。
それが、「本興山 常在寺(ほんこうざん じょうざいじ)」です。
──日蓮宗の古刹。
その起源は、今から700年以上も前、鎌倉小町にまでさかのぼります。
文保年間(1317〜1318年)、日蓮聖人の法孫・了性房日乗上人が開創。
しかしながら、歴史の歩みは常に穏やかではありませんでした。
1333年、新田義貞による鎌倉攻めによって常在寺は焼失。
その後、妙法房日叡(大塔宮護良親王の遺子)によって再興され、
さらに1523年、北山本門寺の日在上人の導きにより、
現在の地・海老名へと新たな一歩を刻みました。
常在寺の中心に祀られているのは、十界勧請大曼荼羅。
──すべての生命の存在領域を表す、尊い曼荼羅です。
静かな堂内で足を止めると、
時を超えて降り積もった、無数の祈りの息吹を感じることができることでしょう。
また、ここには、特別なご尊像たちも静かに鎮座しています。
延宝7年(1679年)に奉納された、子安鬼子母神像。
母と子の安寧をやさしく見守るその微笑みに、訪れる者すべての心をほっと和ませます。
さらに、日蓮宗の荒行堂で感得された大黒尊天神像もお祀りされ、
力強い「福」と「豊穣」のエネルギーを宿します。
そして忘れてはならないのが、伝説の木造・日蓮聖人坐像(像高35.7センチメートル)
小さなその御姿に、静かに、けれど確かに「立正安国」の精神が宿り続けています。
境内を訪れると、まず目に飛び込んでくるのが、荘厳な山門。
そこには、名工・伝左甚五郎作と伝わる、見事な龍の彫刻が施されています。
この龍には、少し不思議な物語が伝わっています。
かつて、池の弁天様と戯れて参詣人を驚かせたため、
住職がその目に釘を打ち、動きを封じたと言われています。
結果、龍は心を改め、それ以来、寺を、そして訪れる人々を静かに見守る存在となったと。
この逸話を胸に、山門をくぐると、
まるで見えない龍が静かに背中を押してくれるような、
優しさに包まれることでしょう。
そして、山門に入ってすぐ左手には
日蓮大聖人降誕800年を記念して建てられた日蓮大聖人像が
凛としたお姿で境内を見守っています。
また、江戸時代には将軍家から9石1斗の寺領を保証される朱印地を授かり、
常在寺は、時の権力者たちからも大切に守られ続けました。
「時代の荒波を越えてもなお、揺るがぬもの」──
常在寺は、まさにそんな「変わらぬ祈り」の象徴です。
一歩、境内に足を踏み入れたなら──
あなたの心の奥に眠っていた「大切な何か」が、そっと目を覚ますかもしれません。
日々に追われ、心が少し乾きかけたとき。
どうか、ふと足を運んでみてください。
そこにはきっと、時を超えて、やさしく、あなたを待つ静かな「救い」があることでしょう。
【山号】本興山
【寺号】常在寺
【宗派】日蓮宗