本成寺(ほんじょうじ)は、茨城県古河市横山町に位置する日蓮宗の由緒ある寺院です。創建は、鎌倉時代の正和3年(1314年)に遡ります。日印上人が鎌倉で開基したのがその始まりです。その後、天文年間(1532~1555年)に現在の古河城北端の地に移りました。特に江戸時代の延宝年間(1673~1680年)、古河城主であった土井利益の母・法清院の菩提を弔うため、法清院の兄弟である日禎上人が本成寺をこの地に移したという逸話が、寺の歴史に深い彩りを添えています。
境内では、赤く塗られた山門がひと際目を引きます。その先には趣ある本堂が控え、参拝者を穏やかに迎え入れます。また、瘡守稲荷や鬼子母神堂、三十番神堂といった堂宇や祠もあり、それぞれが独自の雰囲気と役割を持っています。特に三十番神堂には、法華経を守護するとされる全国でも珍しい30体の木造三十番神像が揃っており、多くの人々の信仰を集めています。
境内には数多くの歴史的価値の高い文化財があり、古河市の指定文化財として保存されています。その一つが法清院殿の墓です。これは土井利益の母である法清院を偲び、立派な石囲いが施された墓で、その存在は寺の歴史を物語っています。また、江戸時代の蘭医で日本初の解剖を行い、『解屍編』を刊行した河口信任の墓や、古河藩士で地誌『古河志』を編纂した小出重固の墓もあります。さらに、明治期の文化人で華道の全国普及や古河城の写真撮影に尽力した武藤松庵の墓もあり、彼の功績を偲ぶことができます。
本成寺は、壮大な歴史と豊かな文化財を誇り、そのすべてが古河の歴史を体感できる特別な空間を形作っています。訪れることで、地域の歴史に深く触れ、心穏やかな時間を過ごすことができるでしょう。
【山号】長久山
【院号】妙光院
【寺号】本成寺
【宗派】日蓮宗